吸血鬼の箱庭
「ナイト…?」
「はい。」
花村はコクリと頷くと、俺の反応など無視して話を進めた。
「そして君、柴田凛君も僕らの世界の運命を握る重要な方なんです。」
「……ん?」
また思ってもみなかった発言に頭が真っ白になる。
次から次に何なんだ。
「えっ……とー?」
思わず首を傾げる。
素っ頓狂な声を上げて、ただ餓鬼…じゃなくて、ナイトと花村を交互に見つめる。
「その前にナイトの正体を教えないと!!」
花村が思い出したように、両手を合わせて言う。
花村は笑顔でナイトを暫く見つめていると、ナイトがため息を吐きながら俺の元へつかつかと歩み寄ってきた。
次の瞬間だ。
ガン!!
「っ……!?」
ぐらりと平衡感覚が狂う。
腰の力が抜け、倒れこむ。
なにが起きた?
その場にひざまずき、振り返る。
そばには、横たわった座っていたはずの椅子。
そして振り返った先には____
腕を組んだナイトが立っていた。
「ナイトー!椅子は蹴らないで下さいよ!壊れちゃうでしょ!?」
サッと花村がまた立ち上がり、横へ避ける。
俺より椅子の心配ですか……
ナイトが無言で俺を睨みつける。
今までにない迫力で、彼の瞳に捕らえられて動けないような感覚だ。
手足が震え、頭に“恐怖”がこべりつく。
白い髪から覗く真っ赤な瞳の中にはユラユラと何か黒いものが揺れている気がした。
「あ…あんた…何者なんやっ…」
声が震えていることに気付き、恥ずかしくなったが、今はそんなの関係ない。
暫くの沈黙。
「…俺か?……俺は…」
やっと口を開いたナイトはこれ見よがしに鋭い歯を見せつけてくる。
ゴクリと息を飲んだ後、彼は言い放った。
「吸血鬼だ。」
「ぇぇぇぇえ!!!?」