吸血鬼の箱庭
吸血鬼と狼人間
「き、吸血鬼!?」
確かに今思えば、こんな奴、怪物でしかない。
長すぎる寿命。鋭い歯。歯というより牙だ。
俺は意外とそんな信じ難い告白をあっさり飲み込んだ。
「…?なんだ?また嘘だとぎゃーぎゃー騒がねぇのか?」
「うるさい。」
俺はそのままナイトをギロリと睨みつけると、ゆっくり立ち上がる。
上手く脚に力が入らず、数歩よろめく。
「信じてもらえるなら話は早い。」
ナイトは着ていた真っ黒なコートを脱ぐと、中に来ていたワイシャツの襟を整えた。
「俺と夢はこの箱庭で“隠れている”」
花村の眉がピクリと動く。
「ナイト!それは違う!!」
花村が声を荒げる。
「黙っとけ。」
それをナイトの落ち着いた声が制する。
「俺らの世界は、主に二つの一族で形成されている。」
ナイトが指を二本立てる。
「一つは俺らの"吸血鬼"の一族。
もう一つは"狼人間"の一族だ。」
「狼人間?」
ここに来てまた新たな怪物の名前が出てきた。
えらくファンタジーな内容だが、今は話を聞くことにしよう。
「つい700年程前までは狼人間と俺たち人間にバレないように仲良く、協力して暮らしてた。
だが……」
「だが?」
ナイトの表情が曇る。
「俺と…“あの野郎”が産まれた途端、世界が狂いだした。」