吸血鬼の箱庭
「レイー!!メアー!!」
「なんだよぉ。」
あれから10年。
二人の神の子は順調に成長していき、所構わず暴れ回る、やんちゃな少年になっていた。
暖炉の前で絵本を読んでいたレイとメアは母の怒声を聞き流した。
「あなた達また召使いさんを困らせているんですって?いい加減にしなさいよっ!」
「もー、わかったよー」
穏やかなプリムラが顔を歪める。
「しっかり返事しなさい!もう!」
「はい!わかったって!」
それにメアが気だるそうに返事をする。
「レイ!返事は?」
「…はい。」
いつもメアの後ろに隠れているレイは引っ込み思案で、大人しかった。
「あら?
……レイ。まだ尻尾が生えないの?」
プリムラがレイの前にしゃがみこんで、顔を覗き込む。
「ごめん…まだなんだ…」
「謝ることないわ!人の成長にはそれぞれのスピードがあるもの。」
そうプリムラが微笑むと、レイは安心したように息を吐き出した。
だが、レイとメアは成長のスピードがあまりにも違い過ぎた。
メアは体格がよく、既に尻尾や耳、牙も生え始めている。
対してレイは、痩せこけており、尚且つ尻尾や耳は一向に生えてこない。
「なんでなの……」
プリムラは少し焦りを感じていた。