吸血鬼の箱庭





深夜____



秋の虫達の音色が聞こえる。




城の外は静かで、音色がより一層耳に入ってくる。



当然城の中も、眠りについた者しかおらず、静まり返っていた。



そんな沈黙を破る声がした。





「きゃぁぁぁあ!!!」





断末魔の叫び声。


間違いない。





プリムラの声だ。




「何事だ!?」





部屋中の明かりがつき、皆が部屋を飛び出す。



勿論夫のトレニアも寝癖をつけたまま部屋を飛び出してきた。




「どこから聞こえた!?」

「書斎からです!!」


皆が一斉に書斎へ向かう。


「プリムラっ!!」




先頭を走っていたトレニアが乱暴に書斎の扉を開けた。



「ひっ……」

目を見開いて、息を飲む。







これは、悪夢なのか?







目の前には、首から血を流し、絶命しているプリムラの姿があった。


真っ白なレースの寝巻きは真っ赤な血の色に変わり、健康的で、美しかった彼女の肌は青白くなっていた。





「な…んだ…これは……」





トレニアが固まる。


動けない。


目が離せない。



「きゃぁぁ!!!」


「わぁぁあ!!」


後から駆けつけた者の叫び声でその場が殺伐とした殺人現場へ変わる。



誰が…



誰が“殺った”____?


誰が“犯った”____?



血眼になって、書斎を見渡すと、震えている小さな身体を見つけた。



「お前っ……」




大きな本棚の後ろから現れたのは、愛しい息子。









レイだった。




「ごめんなさいっ…」



レイが目から涙をポロポロと零す。


だが、そんなところに目はいかない。


皆目を奪われたのは、彼の“口元”だ。








唇から奥歯まで、真っ赤に染まっている。




「俺が…俺が母さんを……!」





なんで、狼人間が人の血を口に含むんだ?





なんで____



次の瞬間、目が覚めた。





この子は“狼人間”じゃない。





“吸血鬼”の神の子だ!
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