吸血鬼の箱庭
「吸血鬼…」
「なんでこの子が…?」
困惑に陥った現場で、レイは涙を流しながら必死に謝罪を繰り返していた。
「ずっと…身体がおかしくて…」
「なるほど…」
トレニアがポツリと呟く。
「イブが…イブが誤って吸血鬼の神の子もうちのエデンの木に産んだんだ……だから二人いたんだ……」
そう解釈すれば、吸血鬼の一族に神の子が現れなかったのも納得出来る。
「吸血鬼がっ…吸血鬼が殺した……」
「凶悪な化け物め!!」
皆が一気に目の色を変え、血まみれのレイに罵声を浴びせる。
レイが俯き、しゃがみ込む。
「……顔をあげなさい。」
上から降ってくる、愛しい父の声。
レイは父にすがりつくしかなかった。
きっと、助けてくれると思った。
少しだけ瞳に希望の光を宿して顔をあげると、そこには、無表情で息子を見つめる父の姿があった。
「この城から出て行け。」
全てが崩れ落ちた。
信頼、愛、希望____
「え……」
「早く出て行け!!化け物が!」
トレニアが怒鳴り散らす。
それを合図かのように、召使い達はレイを羽交い締めにした。
「やめて!!やめて!!」
レイの甲高い声が城に響き渡る。
レイを捕まえた召使い達はプリムラの亡骸を踏み越え、書斎を出て行った。
「離して!!」
「大人しくしろ!!」
そんな口を叩いている召使いの顔は、青ざめていた。
その時だ。
「ぎゃぁぁあ!!」
また叫び声がした。