吸血鬼の箱庭

「吸血鬼…」


「なんでこの子が…?」


困惑に陥った現場で、レイは涙を流しながら必死に謝罪を繰り返していた。


「ずっと…身体がおかしくて…」



「なるほど…」


トレニアがポツリと呟く。


「イブが…イブが誤って吸血鬼の神の子もうちのエデンの木に産んだんだ……だから二人いたんだ……」


そう解釈すれば、吸血鬼の一族に神の子が現れなかったのも納得出来る。


「吸血鬼がっ…吸血鬼が殺した……」



「凶悪な化け物め!!」


皆が一気に目の色を変え、血まみれのレイに罵声を浴びせる。

レイが俯き、しゃがみ込む。


「……顔をあげなさい。」


上から降ってくる、愛しい父の声。


レイは父にすがりつくしかなかった。


きっと、助けてくれると思った。


少しだけ瞳に希望の光を宿して顔をあげると、そこには、無表情で息子を見つめる父の姿があった。




















「この城から出て行け。」

















全てが崩れ落ちた。




信頼、愛、希望____







「え……」



「早く出て行け!!化け物が!」



トレニアが怒鳴り散らす。


それを合図かのように、召使い達はレイを羽交い締めにした。


「やめて!!やめて!!」


レイの甲高い声が城に響き渡る。
レイを捕まえた召使い達はプリムラの亡骸を踏み越え、書斎を出て行った。



「離して!!」


「大人しくしろ!!」


そんな口を叩いている召使いの顔は、青ざめていた。





その時だ。



「ぎゃぁぁあ!!」


また叫び声がした。



< 21 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop