吸血鬼の箱庭
『…もしもし。どちら様ですか?』
「あ、桜田修です。」
シンプルにそう言う。
『修ちゃん…?修ちゃんなん!?』
凛が興奮しているのが分かる。
「久しぶり。」
また繋がった。
また兄弟としての絆が繋がった気がした。
「凛、一人暮らし始めるんやってぇ?
よかったらさ、俺も一人暮らししてるんやけどうち来おへん?」
『修ちゃんってどこの高校なん?』
「有原。凛は蜂ノ川やろ?おばさんから聞いた。2キロぐらいしか離れてへんしさ。住むにはうってつけやと思うんやけど…」
『マジか!よろしくお願いします!』
昔の甲高い声の面影はなく、低く澄んだ声になっていた。
だが、語尾に感嘆符のつく癖は治っておらず、相変わらずの元気の良さだった。
その後、親が離婚した後の自分達の身の上話をし、家の住所を教えてから通話を切った。
一人でにガッツポーズをすると、そのままソファーに倒れ込んだ。
もう一度凛に会える。
そう思うと、胸が高鳴っていてもたってもいられなくなった。
ーーー
「ああいう常に一人でいる人間は狙いやすい。」
「そうね。顔も中々いいじゃない。」
「“エモノ”は……」
『あいつに決めた。』
その頃、家の庭には、俺の人生を狂わす化け物が潜んでいるとは夢にも思っていなかった。