吸血鬼の箱庭
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『りーんー!!!』



『修ちゃーん!!』




随分昔の夏の日。




ギラギラと容赦無く照りつける太陽、揺らめくカゲロウ。



いつも凛と遊んでいた公園の奥の森で俺たちは虫捕りに興じていた。





昨日、一昨日と同じ目的で森にやって来たが、まだ大物は捕れていない。


俺らが言う大物とは、カブトムシのこと。

だが、単なるカブトムシではない。



赤茶色に光る、日本特有のカブトムシだ。




前、凛にそのカブトムシの写真を見せたところ、“ゴキブリみたい”と言われたのを覚えている。





"奴"はゴキブリなどではない。





男のロマンなのだ!!





目を輝かせ、蒸し暑い森の中を走り抜ける。



頭に乗っけていた麦わら帽は今にも風で飛んでいきそうだった。



握りしめた長い、スチール製の虫捕り網を振り回す。



凛はさほど虫捕りに興味がないのか、鼻をほじりながら楽しそうな俺を眺めていた。



森で一番大きな樹の前で立ち止まる。






「わぁ!!!」






「どうしたん!?」




樹のくぼみにあった、艶やかな"蜜"。

これに釣られて昆虫達はやって来るのだ。






樹の上の方を見ると…




「いたぁ!!!」






やっといたんや。






念願の赤茶色のカブトムシが。
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