吸血鬼の箱庭
体格も明らかに女性の体格ではなく、肩幅も広い。
「もしかして……」
顔が青覚める。
「お、男……?」
驚愕している俺の隣りでサンは必死に笑いをかみ殺している。
「あ?あんたなに言ってんの?私は正真正銘の男。
……もしかして… 気付かなかったわけ?」
プッと春が派手に吹き出す。
「いやいやいや!気付かんやろ!!」
なぜか侮辱された気がして必死に反論する。
二人でぎゃーぎゃーもめていると、サンが呆れたように声を上げた。
「はいはい!もういい。
春。早くしろ。」
「ったく…人使いが荒いわ。」
春は“渋々”と言いた気な顔で、大きく息を吸った。
今から何をするのだろう?
俺の目は瞬き一つせず、目を瞑り、両手を広げる春に釘付けになった。
「あ"ぁぁぁあっ……!」
春の鷲色の瞳が濁った黄金色に変わり、目を見開く。
「えっ……」
牙が生え、襟足から茶色の毛が生え始める。
徐々に腕、足、首と毛が生えていき、全身が毛で覆い尽くされる。
「嘘やろっ…?」
目の前に黒いゴム臭い煙が立ち込める。
「げほっ…おぇっ……」
煙が気管に入り、咳き込んでいると立ち込んでいた煙が消えた。
目に涙を浮かべながら前を見るとそこには、
一匹の狼がいた。