花言葉を君に。
よかったなぁ、と花たちに声をかける姿を見て、小さく吹き出してしまった。
「あのっ、隣いいですか?」
「ん?いいよ。」
許可をもらったので、男性の隣にしゃがみこむ。
「…花、お好きなんですか?」
「うん。俺の一番の理解者。良かった、ココにも居場所があって。」
その言葉の意味がわからなくて、黙っていると言葉を続ける。
「俺、今日転校してきたんだ。もし花壇がなかったらどうしようかと思ってた。」
また小さく笑う。
よく笑う人だ。
「あたしも…あたしにとってもココが自分の居場所です。」
小さな声で話し始めると、男性がこっちを見た。
「いつもあたしはひとりで、だからココしかないんです。ココが唯一、自分が自分でいられる場所で。ココで花の世話をしているときに、自分が自分になるんです。」
何を根拠に、自分のことを話していたのだろう?
直感的に、この人を悪い人だとは思えなかった。
もしかしたらココが自分の居場所だという彼に、自分自身を重ね合わせていたのかもしれない。
ちょうどそのとき、予鈴が鳴った。
あたしと男性は同時に立ち上がると、男性の方から大きな手を差し出して自己紹介をした。
「俺は3年のユウキ。よろしく。」
その手を握り返して、あたしも自己紹介する。
「あたしは1年の黒澤です。」
そしてまた、男性―――ユウき先輩は笑った。