花言葉を君に。


ちょうど予鈴が鳴ったので教室に戻る。


そのまま授業を受けて、3時間目の終わりの休み時間のことだった。


「あの、黒澤さん。」


一番窓側の自分の席で本を読んでいると、クラスメイトのひとりに声をかけられた。


「何?」


「ご、ごめんね、あの、3年生の先輩が呼んでるんだけど…」


「え?」


教室の入口を見て、椅子から飛び上がった。


後ろの机とぶつかって大きな音が出てしまい、注目の視線がいたい。


なんで…


視線をすり抜けるように教室を出る。


そこに立っている人は、小さく嘲笑する背の高い紺縁メガネの男性。


それは、あたしが会いたかった人だった。


「ユウキ先輩…」


「どーもっ。そんなに俺がいるのが不思議?もう会えないと思ってたとか?」


一瞬で顔が赤くなる。図星だ。


「いや、あのっ、違います、違うんですけど、ユウキ先輩に伝えたいことがあって…」


「実は俺もなんだ。多分一緒のことだろうけど。」


小さく笑って一息ついた先輩に合わせて、伝えたいことを簡略化して言ってみた。


「「ゼラニウム!」」


そのときピッタリと異口同音で発せられた、その花の花言葉を脳内で思い浮かべていた。


“真の友情”“君がいて幸せ”“愛情”


でも、今日咲いた黄色のゼラニウムには、特別に花言葉がついている。


“偶然の出逢い”


その言葉を噛み締めて、ユウキ先輩と笑いあった。




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