花言葉を君に。


放課後、裏庭の花壇の前にしゃがみこんで考える。


楓にぃに。


もしも、楓にぃにがそばにいたら、ユウキ先輩みたいに優しく笑ってくれた?


一緒に花壇を見て、喜べた?


優しさに触れると、楓にぃにのとの思い出がフラッシュバックして、苦しくなる。


あたし、楓にぃにと一緒にいれたら、きっともっと普通の人だったのかな?


考えれば考えるほど、悪循環で楓にぃにを責めてしまう。


誰も悪くない。


だけど、“もしも”がたくさんありすぎて、考えちゃうんだ。


今の楓にぃにのこと。


どこかで笑っていて欲しいって思ってる傍らで、どこかでじゃなくて隣で笑っていて欲しいって思ってる。


黄色のゼラニウムの花言葉。


「偶然の出逢い…」


今日咲いたばかりの小さな花に向かって、呟いた。


ユウキ先輩と出逢えたこと、すごく感謝してるけど、楓にぃにも逢わせてよ。


今、一番逢いたい人。


今、一番笑っていて欲しい人。


あたしの大切な、たったひとりのお兄ちゃん。


あたしの大切な、たったひとりの家族。


「お願い…逢いたいよ…。」


込み上げてくる涙を抑えることなど、不可能だった。


楓にぃに、もう一度だけでいい。


逢いたい…


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