花言葉を君に。


「…紫苑ちゃん?」


後ろであたしを呼ぶ声がした。


振り向かなくても誰かわかる。


あたしのことを“紫苑ちゃん”って呼ぶのはただひとり。


振り向くけれど涙で滲んで、はっきりと顔は見えない。


それでも名前を呼んだ。


「…っユウキ先輩…!」


それと同時にユウキ先輩の胸を借りて、泣いた。


そんなあたしをただ黙って優しく抱きしめてくれた。


それでもまた、“もしも”を考えてしまう。


…楓にぃにでも、こうやって優しく抱きしめてくれたのかな?って。


「どうしたの?」


優しい声。どうしてこんなにユウキ先輩は優しいのだろう?


でも…頼ってはいけない。


あたしはまだまだ溢れそうな涙を無理やり止めて、笑顔をつくった。


「大丈夫です。何でもありませんから!」


大丈夫。大丈夫。


「…シダレザクラの花言葉って知ってる??」


「へ?」


突然の質問に素っ頓狂な返事をしてしまう。


シダレザクラの花言葉なんて知らなかったので、うつむく。


「ごまかし。それがシダレザクラの花言葉だよ。」


ユウキ先輩の大きな手が、あたしの頭を優しく撫でた。


もう、ごまかせない。




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