花言葉を君に。
その日の帰り、いつも通りひとりで帰る準備をしていると、クラスメイトに声をかけられた。
特にこれといったことさえ話したことのない、栗色の髪が短く揺れる女の子。
名前は確か…
「ねぇ、黒澤さん。」
「なんか用?」
「もしよかったら一緒に帰らない?」
「はぁ?」
突然のお誘いに、苛立ちと驚きが混ざり、頭痛がした。
「どうして?友達と帰ればいいじゃない。」
名前、何だっけ?
冷たくあしらいながら、考える。
「私、友達いないから。黒澤さんも、いつもひとりでしょ?寂しくないのかなーって思ってたの。」
黒澤さんも、ってナニソレ?も、は余計なお世話でしょ。
「残念だけど寂しくないから。じゃ。」
帰ろうとすると、ガッシリと腕を掴まれてしまった。
「ちょっと、離し」
「よし、とりあえず帰ろ!ほらほら一緒に帰ろう!」
はぁ?!
なんて強引な子!ここまでされると逆になんとも思わなくなる。
そのとき、ふと彼女の名前を思い出した。
確か、桐生さん。桐生 明梨(キリュウ アカリ)。
それと同時にあることも思い出す。
この人、男好きで男たらしの人だ…。
そう気づきた時には既に手遅れで、強引に手を引く桐生明梨と一緒に帰る羽目になった。
そのせいで、放課後にユウキ先輩と会えなかった。