花言葉を君に。


…好き。


その気持ちはあたしをわからなくさせるモノ。


好きだなんて、そんなこと思ってもいなかった。


「好きって、何なんだろう。」


吐き捨てるように言った言葉を拾って、桐生明梨が言う。


「好きは好きでしょ?あなた人を好きになったことないの?」


その好きっていう気持ちがわからない。


あたしは人を本当に好きになったことがないのかもしれない。


黙ったままでいると、桐生明梨がため息をついた。


「はぁ。つまらない人。ライバルならもう少し張り合いのある人が良かったんだけど。」


ライバル?


桐生明梨はやっと繋いでいた手を離し、あたしを真正面から見つめた。


「私はユウキ先輩のことが好き。絶対に譲らない。宣戦布告する。」


どうしてそんなに真剣な目をしてるの?


人を好きになれば、あたしもこう言えるようになるの?


わからない。


わからないのはあたしだけ?


「まぁ、黒澤紫苑も頑張りなさい。ライバルがいた方が恋も楽しいでしょ。」


恋…。


あたしはユウキ先輩に恋をしているの?


「じゃ、私こっちだから。あなたって結構面白い人ね、黒澤紫苑。バイバイ。」


最後に小さく笑った桐生明梨は、駆け足で帰っていった。


ひとり取り残されて、立ち尽くすあたし。


好きとか、恋とか、そんなことを考えてたら、頭の中がグチャグチャになった。

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