花言葉を君に。



「ユウキ先輩、彼女って…」


「あ、いや、違うって。イズミが勘違いしてるだけだから!」


「え?紫苑ってユウキの彼女じゃないの?」


「ち、ち、違います!!やめてください、そういうこと言うの!」


…ユウキ先輩の彼女希望ではありますが。


そんなふうにいろいろ言い争って、とりあえずイズミ先輩とも番号交換して、家に帰る。


一気に現実に引き戻される。


「ただいまー。」


「おかえりなさい、紫苑ちゃん。」


あたしを出迎えてくれたのは、美智さん。


「…何かいい匂いしてる。」


ぼそっと呟くと、ニコニコ笑ってテーブルと指差した。


見ると、シフォンケーキ1ホールがあった。


「暇だったから作ってみたの。食べない?」


こうやって美智さんと話すのは、久しぶりだった。


あれからずっと、できるだけ避けてきたから。


でも…


「紅茶、淹れますから。」


それだけ言って、キッチンで紅茶を淹れた。


美智さんはフォークとか、お皿とかを準備して笑ってた。


これで良かったのかな?


…本当の家族になんてなれるわけがない。


だったら、それでもいいから、近づけるだけ近づいてみよう、だなんて。


そんなふうに少しだけ思い始めたあたしに、美智さんは気づいてるのかもしれない。


< 35 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop