花言葉を君に。


その約束は果たされなかった。


両親を失ったあたし達は、別々に引き取られることになった。


離ればなれになるくらいなら、施設に入ってもいい。


そう主張した楓にぃにの意見も聞き入れず、あたし達はそれぞれの道を進むことになった。


ママがいなくなってから、ずっと泣いてたあたし。


楓にぃには一度も涙を見せなかった。


最後の最後まで、あたしは泣いてて、楓にぃには我慢して。


引き取られる日の車の前で、最後に交わした言葉。


「ごめんね、紫苑。にぃに約束守れないよ…。」


「大丈夫だよ、にぃに。」


「いつか必ず一緒に暮らそうな。絶対迎えに来るから。毎日手紙も書く。電話もする。だから、にぃにのこと忘れないで。」


「うん。」


「紫苑。…大好きだよ、紫苑。」


「紫苑もにぃにのこと、大好き!」


それを告げる瞬間だけ涙をこらえて、笑顔を見せた。


だって、楓にぃにの中のあたしはいつでも笑って欲しかったから。


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