花言葉を君に。
4章 クロタネソウ
朝、鳴り響くケータイの音で、目が覚めた。
ウッドカーテンの隙間から、漏れる光。
時計の針は午前10時を指そうとしていた。
体を起こすと、激しい頭痛がした。
思考回路が全く機能をなしていない…。
あ。あたし目覚まし止めて寝てたんだ。
あ。あたし学校サボっちゃったんだ。
高校に入学して初めてかも。
少しずつ思考回路が機能を取り戻す。
あ。今ケータイ鳴ってる?
ディスプレイの表示を見て、手が止まる。
「イズミ先輩…。」
その名前を口に出すことさえ、苦しい。
あたしは持っていたケータイを離し、耳を塞いだ。
聞こえない。
聞こえるのは、自分の心臓の音だけ。
そのうちにケータイが鳴り止む。
安堵のため息が漏れた。
イズミ先輩、ごめんなさい。
安心したのも束の間、またケータイが鳴り始める。
もう、いやっ…!
そう思うけれど、ディスプレイの表示をチェックする。
「あ…」
今度はイズミ先輩ではなく、ユウキ先輩からの着信だった。