花言葉を君に。
体を離した尚紀さんは、重い口を開いた。
「怖かった。自分の本当の娘じゃないから、離れていくのが怖かったんだ。だから距離をとってた。でも、それが結局…」
「違います!あたしが悪いんです。本当の親じゃないから、遠慮してました。今でもしてます。それに、美智さんはあたしを引き取ったこと後悔してるみたいだし…」
「え?それは違うよ。」
思いがけない返事に、言葉が出なかった。
「美智は確かに君を引き取ったことを後悔してた。でもそれは、君の将来を思ってたからだよ。いつか紫苑ちゃんが養子だったことが」
「あなたの未来に支障が出るのが、怖かったの。」
それまで寝ていた美智さんの声がして、ビックリする。
「美智さん…!大丈夫ですか?!」
「ええ。ありがとう。…紫苑ちゃん。もしさくらさんが亡くならなかったら、きっと幸せな人生だったのにって思うと苦しかった。でももしもさくらさんが生きてたら、紫苑ちゃんに出逢うことはできなかったのよね。」
「美智の言うとおりだよ、紫苑ちゃん。本当は君と家族になりたかった。ずっと前から。」
戸惑って、戸惑ってそのまま今日までの日々を過ごしてきた。
あたし達はすれ違っていただけなの?
お互いに、お互いのことを想っていたから。
本当は信じていいのかな?
美智さんも、尚紀さんも、あたしの両親だって。
あの家をあたしの居場所って言ってもいいのかな?
今からでも、遅くない?
“本当の家族”になれる?
「あたしを…」
自分から変わらなくちゃ、何も変わらない。
「あたしを、二人の娘にしてください。家族になってください。」