花言葉を君に。


一瞬時が止まったような気がした。


あたし、とんでもないこと言ってる。


わかってる。


でも、止められなかった。


「…もう、そのつもりだったよ。僕はね。」


尚紀さんが言う。


「え?」


「ええ。今までも、これからも本当の家族よ。ずっと。」


美智さんも笑う。


あぁ。


あたしは今、初めて黒澤紫苑になったんだ。


ずっと大和紫苑のまま止まったあたしが、やっと二人の娘になれた。


…ママ、パパ、楓にぃに…あたしに居場所ができた。


もう一度心から笑えるような気がするの。


だから、もう少しだけ待っててね。


…楓にぃにに逢えるまで、せめてそれまでココにいさせて?


「あたし、美智さんと尚紀さんの娘になれて良かったです。ありがとう。」


涙が零れたけれど、それはもう悲しみの涙じゃない。


温かい涙…。


あたしたちの心のわだかまりを溶かしていく涙。


もう、大丈夫。


あたし、頑張るから…。


< 53 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop