花言葉を君に。


「・・・わかってた。お前に好きな人がいることも、お前がそういうヤツだってことも。」


「え?」


「真面目で、素直で、人見知りだけど笑うとすげぇ可愛くて。人にも花にも優しくて。・・・そんな紫苑だから好きなんだよな。・・・わかる?」


「わ、わかりません。」


「いいんだよ、わかんなくて。」


イズミ先輩は笑ったあと、腕時計を見て言った。


「もう少しで来るんだろ?そろそろ行くよ。」


誰が、とは言わなかった。もう本人から聞いているのだろう。


「はい。」


あたしも決して口にしなかった名前。イズミ先輩の親友。


「・・・ありがとう、紫苑。俺、本当に良かったって思うよ。お前のことす」


「イズミくん・・・?」


聞こえた声。女の人の声だった。


照れくさそうに笑ったイズミ先輩の影に、誰かが見えた。


ユウキ先輩なはずはなかった。


その人影は小さくて、さっき聞こえたのは女の人の声だったから。


イズミ先輩は不思議そうに振り返り、あっ、と小さく声をもらした。


「やっぱりイズミくんよね?久しぶり。元気だった?」


そう微笑んだ彼女の声は、澄んだ鈴のような綺麗な声で。


あたしの頭の中をスーっと通り抜けた。


・・・何かが動き出す、そんな予感がした。


< 57 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop