花言葉を君に。
「・・・わかってた。お前に好きな人がいることも、お前がそういうヤツだってことも。」
「え?」
「真面目で、素直で、人見知りだけど笑うとすげぇ可愛くて。人にも花にも優しくて。・・・そんな紫苑だから好きなんだよな。・・・わかる?」
「わ、わかりません。」
「いいんだよ、わかんなくて。」
イズミ先輩は笑ったあと、腕時計を見て言った。
「もう少しで来るんだろ?そろそろ行くよ。」
誰が、とは言わなかった。もう本人から聞いているのだろう。
「はい。」
あたしも決して口にしなかった名前。イズミ先輩の親友。
「・・・ありがとう、紫苑。俺、本当に良かったって思うよ。お前のことす」
「イズミくん・・・?」
聞こえた声。女の人の声だった。
照れくさそうに笑ったイズミ先輩の影に、誰かが見えた。
ユウキ先輩なはずはなかった。
その人影は小さくて、さっき聞こえたのは女の人の声だったから。
イズミ先輩は不思議そうに振り返り、あっ、と小さく声をもらした。
「やっぱりイズミくんよね?久しぶり。元気だった?」
そう微笑んだ彼女の声は、澄んだ鈴のような綺麗な声で。
あたしの頭の中をスーっと通り抜けた。
・・・何かが動き出す、そんな予感がした。