花言葉を君に。


「え・・・」


「イズミくんは私の教え子。それだけ。」


「そうですよね、ごめんなさい変なこと聞いて。」


やっぱりあの噂は噂にすぎなかった。


よかった━━━━


「でもね、イズミくんのこと大好きだった。ただひとりの女性として“和泉 楓”という人が好きだった。先生としてではなくて、ね。」


一瞬、耳を疑った。


え?今、なんて言ったの?あたしの聞き間違え?


「ごめんなさい、今なんて・・・」


「私は、イズミくんが好きだった。」


いや、そうじゃなくて。そこはちゃんと聞き取れましたから。


あたしが聞きたいのは・・・


「・・・イズミ先輩って、和泉 楓っていうんですか?」


「うん。イズミくんも楓よ。フルネームは。」


フルネーム。


あたしが聞こうとしなかった本当の名前。


イズミは下の名前だと思ってた。苗字だなんて思いもしなかった。


「知らなかったの?」


返事は頷くことしかできなかった。


イズミ カエデ


その6音が耳にこだまする。


楓にぃにと同じ名前。あたしの探してる大切なお兄ちゃんと・・・。

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