花言葉を君に。


鏡の前で、笑顔をつくる。


鏡に映るのは、口元は笑っているのに、目が笑っていない自分。


それでもいい。


そんなことに誰も気づかない。


誰もあたしを見ない。


でも、笑っていなくちゃ。


もう一度笑顔をつくって、2階からリビングへ下りた。


「おはようございます。」


キッチンにいるママのいとこ、美智(ミチ)さんと、朝食を食べている、尚紀(ナオキ)さんに声をかける。


「おはよう、紫苑ちゃん。」


「おはよう。」


二人は12年前にあたしを引き取ってくれた人。


去年、養子縁組したばかりだ。


ダイニングテーブルの定位置に座って、小さくいただきますと言って、朝食を食べ始める。


ずっと無言で、会話のない“偽りの家族”。


あたしは、12年前からこの二人の“娘”として生きてきた。


頑張って生きてきたんだよ?


箸を握る手に力がこもる。


信じてた。


二人のことを信頼できそうだったのに、壊れていった“本当の家族”への道。


聞いてしまった、聞かなきゃよかった会話が今でもフラッシュバックする。


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