花言葉を君に。


「美智さん。」


リビングに下りて声をかけると、美智さんはホッとしたような表情を浮かべた。


「お腹空いたでしょ?ホットケーキ焼いてあるわよ。」


美智さんは何も聞かないで、微笑んだ。


「ありがとう。」


あたしも何も話さない。


きっと、何かを感じているのだろう。


朝、抱きついたときの温もりがそう語っていた。


ふかふかのホットケーキを食べながら、今日の分の勉強をしていると、ケータイが鳴った。


“今から会える?”


そう一言だけ書かれていた。


一瞬、今は会いたくないと思ったけれど、“あの公園で4時になら、大丈夫です。”と返信した。


「ごちそうさまでした。・・・美智さん、あたしちょっと出掛けるね。」


「気をつけて行ってらっしゃい。」


何も聞かない。何も話さない。


黙って、微笑むだけ。


それがあたしたち家族の暗黙のルール。


4時前に家を出ようとすると、美智さんが見送りに来た。


「すぐ帰ってくる。」


「ええ。・・・紫苑ちゃん。」


「ん?」


「私は紫苑ちゃんの味方よ。何があっても。」


微笑みと同じくらいの優しさを持ったその言葉を胸に抱き、あたしは公園に向かった。

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