花言葉を君に。
…一年前、養子縁組をするって決めた夜のこと。
夜中の2時に目が覚めてしまったあたしは、リビングへ下りた。
そこにはまだ起きてる二人がいて、何かを真剣に話してた。
階段に立って、聞き耳を立てた。
「…今更だけど、最近思うの。」
「何を?」
「11年前、さくらさんが死ななかったらって。そもそも旦那さん…あの人がいてくれればって思うのよ。」
それを聞いた瞬間、立てなくなってた。
足の、全身の力が抜けて、座り込んだ。
さくらさん…それはあたしのママの名前だったから。
「美智。それは…」
「わかってる。でもあなただって言ってたでしょ?仕方なく引き取った子なのに、って。」
「そうだけど。仕方ないだろ、俺たちが一番近い親戚だったんだから。」
「でも私、さくらさんと会ったことあるの3回くらいなのよ?ほぼ関わりのない人だったの。せめて旦那さんがいれば、紫苑ちゃんを引き取ってもらえたのに…。」
ショックだった。
ずっと家族になれると思って、近づけば二人はあたしを笑顔で迎えてくれると信じてた。
それは全てウソだったんだ…。
混乱して涙さえ出なかった。
それからだ。
あたしと二人の間の溝が、修復不可能な大きな溝になったのは。