花言葉を君に。


…一年前、養子縁組をするって決めた夜のこと。


夜中の2時に目が覚めてしまったあたしは、リビングへ下りた。


そこにはまだ起きてる二人がいて、何かを真剣に話してた。


階段に立って、聞き耳を立てた。


「…今更だけど、最近思うの。」


「何を?」


「11年前、さくらさんが死ななかったらって。そもそも旦那さん…あの人がいてくれればって思うのよ。」


それを聞いた瞬間、立てなくなってた。


足の、全身の力が抜けて、座り込んだ。


さくらさん…それはあたしのママの名前だったから。


「美智。それは…」


「わかってる。でもあなただって言ってたでしょ?仕方なく引き取った子なのに、って。」


「そうだけど。仕方ないだろ、俺たちが一番近い親戚だったんだから。」


「でも私、さくらさんと会ったことあるの3回くらいなのよ?ほぼ関わりのない人だったの。せめて旦那さんがいれば、紫苑ちゃんを引き取ってもらえたのに…。」


ショックだった。


ずっと家族になれると思って、近づけば二人はあたしを笑顔で迎えてくれると信じてた。


それは全てウソだったんだ…。


混乱して涙さえ出なかった。


それからだ。


あたしと二人の間の溝が、修復不可能な大きな溝になったのは。







< 9 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop