最後の恋―番外編―
「待って!! 一個でしょう? 一個いうこと聞けばいいって話だったでしょう?」
「うん、だからその頼みごとが“今日一日何でも言うこと聞く”ってことなんだけど」
何言ってるんだ? とばかりに首をかしげる学。
でも私には分かる、これは確信犯だ!
きっと内心ではしたり顔でほくそ笑んでいるに決まってる。
こういう頼みごとをすることさえも学は想定していたに違いない。
しかも、約束をしたすぐあとは警戒していた私が忘れたころに、その上寝起きで頭が働いてない時を見計らって持ち出してくるなんて、なんて周到さなんだろう。
悔しい……けど、言い返せない……!!
「何でも言うこと聞くって言ったよね?」
そう言ってほほ笑む学が、悪魔に見えてくる。
もうこれは屁理屈以外の何でもないし、最初の約束とはあまりにもかけ離れてる。
だけど悔しいことに、学の言い分は間違ってはいないのだ。
私には反論する余地もないし、学を言葉で丸め込むことは到底無理だし。もうこれは受け入れるしかないと悟った私は、しぶしぶ頷きながらもガックリとうなだれた。
こんなことになるなら約束したときに“今日一日何でも言うことを聞くとかそういうのはなしね”と釘を刺しておけばよかった。
……それもこの状況になったからこそ思いついたことだけど。
あの時は欠片も思いつかなかったけど。
後悔先に立たずとはこのことかと身を持って実感した。