最後の恋―番外編―


学に手渡されたのは、見慣れたロゴがプリントされた大きめのショップバッグだった。

真ん中で止めてあるシールを剥がして中を見てみると、やっぱり茜さんのブランド服がこれでもかってくらい入っている。

学は、私が中を確認したのを見届けてから、これに着替えるように言って寝室から出て行ってくれた。

ちゃんと着替えるかどうかまで確認されなくてよかった、と学が出て行った扉を見て安堵の息をはく。

一人になった寝室で、ベッドに腰を降ろして改めて袋の中から服を取り出してしばらくそれと睨めっこ。

そして、素直に着るしかないと腹をくくって手を伸ばした。

まずは白いシフォンの長袖ブラウスに袖を通した。
丸襟の縁には生成りのレースがあって袖の飾りボタンが真紅のバラを模している。一緒に入っていた茶色のレースで出来たリボンを胸元で結ぶけど、4回目で納得のいく形に結ぶことが出来た。

次は春らしい淡い桃色のプリーツスカート。ここまで短いスカートをはいたのは久しぶりだ。
裾にあしらわれている黒のレースが、可愛らしいスカートに大人な雰囲気を足してくれている。

それからオフホワイトのピーコート。これも袖の飾りボタンがバラをモチーフにしているけれど、色が真紅じゃなくて黒だった。このブランドの特徴は細部まで可愛いところだ。

ご丁寧に茶色のサイハイソックスまで用意されている。
それにも茜さんのブランドのロゴが両サイドに黒で刺しゅうされていて、スカートと同じ黒のレースもあしらわれている。

靴は少しヒールの高い黒のローファー。ブラウスと同じ飾りボタンが踵の後ろに2つ縦に並んでいた。

全身茜さんのブランドでコーディネートされた自分を鏡で見て、確かに自分好みであることは否めなかったけれど、この総額を考えるだけで気が遠くなる。
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