最後の恋―番外編―

でも、私だって頑張っているのだ。

レース編みは最初の頃よりは上手になったし、前に途中で編むのをやめてしまったレースのストラップもあの後ちゃんと完成させて、今では学の携帯にしっかりとぶら下がっている。

それに料理も最初に比べると食べられる味になってきたし手際もよくなってきたと自分では思う。ただどう頑張っても、ヘアアレンジ力は中学の時と比べてあまり上達してくれない。

むしろ中学時代のレベルからずっと平行線だ。

鏡越しに見ていると、左右のどっちがどっちだかわからなくなってしまうのが一番の原因だと思う。

そんなことを考えているうちに、学は器用にいくつもの編みこみを作り、それを綺麗にまとめあげてなんとも可愛い髪型に仕上げてくれていた。


「はい、完成」

私の頭を軽くポンとたたいて、「はい、コレ持って。 中に財布と携帯といつも持ち歩いてる化粧ポーチは入れといたから」と私に本のようなものを手渡した。

よくよく見れば、それは本を模したバッグで、ちゃんと斜めにかけられるようなっていた。
……もしかして、と鞄をじっくり見てみると、端っこにちょこんともう見慣れたロゴを見つけた。

驚き固まる私の頭を今度は撫でてから、「じゃあ行こうか」と玄関の方へと行ってしまった。


「え!? 出かけるの? どこに行くの?」


慌ててバッグを肩に下げて背中を追いながら問いかけてみるけれど、振り向いた学は隙のない笑顔を浮かべただけで何も答えてくれない。

なにか悪戯を思いついた時の顔だ、あれは。

……悪戯とはいかないまでも、それに近いことを考えているに違いない。


こういう時は何を言っても教えてくれないと、今までの付き合いの中で嫌ってほど分かっているので早々に諦める。

学が教えてくれることは諦めるけれど、今から一体なにがあるのか、どうしても頭の中はそればっかり考えてしまう。


……それも学の思惑通りなんだろうな。
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