最後の恋―番外編―
去年の冬から今にかけては、短い、と言っても5日くらいの出張がたびたびあったけれど奇跡的に週末には被らなくて頻繁に会えていた。
でも夏は2週間近く学がドイツに出張に行っていたこともあったのだ。
その時は淋しくて仕方がなかったのも記憶に新しい。
よくよく会社の仕事内容を聞いてみても、中小企業の受付の私にはとても理解できるようなものじゃなかった。
要は、いっぱい外国語が話せて、仕事が出来て、要領がよくて、コミュニケーション能力がある人じゃないとやっていけない。
とにかくハードでタイトな仕事をこなす学が、暇を見つけては連絡してくれて、休日は私と会う時間を作って、私との時間を大切にしてくれていることに、愛されてるなぁってしみじみ思う。
こういう行き先を教えてくれないドライブでさえ、学と一緒にいられるだけでこの上ない幸せに包まれてしまうのだ。
結局はいつもと同じように、学と一緒にいられることが嬉しい、という結論に至った私は、行き先も目的も目的地までの楽しみにしておこう、と考え直して学とのドライブを楽しむことにした。
楽しむと決めたら、黙ったままでいるなんてもったいない。
やっぱり天気の話題はないな、と、今週あった出来事を学に話して聞かせる。突然話し出した私に最初は怪訝そうにしていた学も、同じように今週あっったことを話してくれた。さっきまで静かだった車内は音楽なんていらないほど尽きることない話であふれた。
尽きることがないほどの話がやっと終わったのは、車が静かに止まって学がちょうどエンジンを切った時だった。
「あんなに話してたのに、着いたタイミングでちょうど話が切れるなんて、すごいね!」
「ホント、美月って些細なことでくるくる表情変えるから、見ていて楽しいなぁ」
素直に感動したから言ったのに、学はそう言ってシートベルトを外した。
「さ、荷物持って降りて」
にこやかにそう言われて車の中から外を見る。ついた場所は何の変哲もない一軒家。
……といったら殴られるんじゃないかってくらい、豪華なお屋敷だった。