最後の恋―番外編―
車を降りて目の前に立ちはだかるのは、白い大きな柵のような門。
その隅っこにあるインターフォンを学が押す。インターフォンの向こうの人と一言二言話すと、門がひとりでに開いた。
もう、ポカンと口を開けることしかできない。
すたすたと進んでいく学に、門の前に停めたままの車をどうするのか聞いてみたけど、「お手伝いさんが車庫まで運んでくれる」と普通じゃあり得ないことを当然のことように言った。
「お、お手伝いさん?」
「そう、お手伝いさん」
この状況にすでに置いていかれている私の手をいつもの様に握りながら、学は煙突のある赤茶色の屋根と白い外壁の洋風のお屋敷の方へと歩いていく。
待って。
もしかして、もしかしなくても、ここってまさか。
「ただいまー」
大きな玄関の扉を開けた学が発した言葉で、予感が確信に変わる。
「が、学……、ここって」
「うん、俺の実家」
できることならはずれてほしかったのに、あっさりと肯定されて、すぐさま回れ右をしたくなった。
心構えも何もできていない。
菓子折り1つ買ってきていないし、しかも年下のこんなちんちくりんが学の彼女だなんて、認めてもらえるわけがない。
お姉ちゃんだったら、学の隣に立っていても遜色ない。
お姉ちゃんだったら、学の彼女として何の不服もないだろう。
お姉ちゃんと私は雲泥の差があるのだ。
以前に比べたら、お姉ちゃんに対するコンプレックスはなくなりつつあるけれど。やっぱりどうしたって“お姉ちゃんには敵わない”と思う気持ちは無くならないし、なんだかんだ言ってもお姉ちゃんは私の憧れで目標なのだ。