最後の恋―番外編―
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。 母さんは姉さんみたいな性格だし、父さんは俺に瓜二つらしいし」
「っていうことは、学と同じでヘタレ?」
安心させようとしてくれる学の言葉に、私はいつもの様におどけて見せる。
うん、学と話しているだけで緊張がゆっくりとだけど、ほぐれていっている。
……私は学が好き。
似合わなくても、ふさわしくなくても、学のことが好きだから。どんなことをしてでも学の家族に認めてもらいたいし仲良くなりたい。
そしてできるなら、私のことを気に入ってもらいたい。
「うちの女性たちに言わせれば、我が家の男はみんなヘタレなんだってさ。 まったくひどい言い草だよね」と肩をすくめる学に思わず笑みがこぼれる。
学のそのしぐさが芝居がかっていて、でもそれがおどけているようには見えずに様になってしまっているからちぐはぐなのだ。
おどけているつもりなのに、そんな仕草さえ魅せてしまう学は、ある意味ちょっぴり損をしている。
「菓子折り持ってきてないけど、礼儀知らずって思われないかな?」
「大丈夫、美月を拉致して紹介するって先週言っておいたんだ。だから、美月が何も知らずに無理やり連れてこられたって分かってるはずだから、そんなこと絶対思わないよ」
にっこり笑いながら私の腰に腕を回して玄関の中へと誘う学。その腕に逆らうことなく、ゆっくりと学の生まれ育った家へと足を踏み入れた。