最後の恋―番外編―
「はじめまして、学の母の坂口志保です。 よろしくね、美月ちゃん」
言い終わるか終らないかのうちに、満面の笑みの学のお母さんはガバッと私を抱きしめた。
苦しいくらいに抱きしめられて、行き場を失った私の手がピンと硬直する。
「あ、あのっ」
「うんうん、やっぱり女の子はこれくらい小さくなきゃ。 このすっぽり腕の中に納まる感じがいいわね」
そう言った学のお母さんは私よりも背が高くて、ふにゅっとした柔らかい感触に顔が包まれる。
……ぜったい私より学のお母さんの方が胸大きい、とちょっぴり悲しくなってみたりして。
それでもこうやって抱きしめてくれたってことは、少なくとも嫌われてはいないんだよね?
「志保、離してあげなさい」
そう言ったうっとりするようなアルトの声は、学と似ているけれど学より少しだけ低い。
声の方に視線をやると、学の未来の姿と言っても過言じゃないくらいに、学と似た男の人がいた。お母さんの肩越しに視線が合うと、にっこりと微笑まれる。まるで未来の学にそうされたような錯覚に陥ってしまう。それくらい、学とそっくりだった。
学じゃないと分かっているのに、学の未来を見ているようでドキドキしてしまう。