最後の恋―番外編―
急に視界をふさがれて驚いている私に、学はさも面白くなさそうな声音でただ一言。
「そういう可愛い顔は俺だけのものなんだから、ほかの誰かに見せちゃダメだ」
聞いているこっちが恥ずかしくて死にそうなほど、甘い言葉をくれる。
ヘタレで鈍感な学は、それに加えてどこまでも甘い。
そのあと、宮田さんの店に行くために、学の車へと移動した。途中のカフェでテイクアウトしたホットコーヒーと抹茶ラテを、駐車場の車の中で飲んでいる。
私としては、カフェで飲みながら話をしてもよかったんだけど、なぜか学が車で飲むと言い張ったのだ。
季節は冬真っ只中。アイドリングしていない車の中は吐く息が微かに白く色づくくらい寒い。
両手で持ったカップから得る温もりだけが、唯一の暖を取る方法だった。
ふぅふぅと息を吹きかけて、チビチビと抹茶ラテを飲んでいると、「ごめん」と学が急に謝ってきた。
「カフェで美月の可愛い顔を、他の男に見せたくないからテイクアウトしたんだ。それで美月に寒い思いさせてるんじゃ意味ないよな。サイアクだ、俺……」
そうやって自己嫌悪に陥っている学はとても可愛くて、私の胸はキュンとなる。
普段のかっこよさとは結びつかない、時々見せるそのヘタレさが、私の胸キュンポイントをついているということに、本人は気付いていない。
「ううん、学の車好きだもん。それにこうやって寒い中、あったかいの飲むのも結構好きだし」
「……でもなぁ、美月のほっぺ、寒さで真っ赤」
そうやって、私の頬に触れる学の手は、カップを持っていたせいかポカポカと温かい。私は自然と目をつむってその温もりを堪能した。