最後の恋―番外編―
私の説明に、志保さんは「……確かに、そうね」と頷いてくれた。
「彼女の存在で私が学さんに不信感を抱くようなことはないです。でも、正直学さんの過去の恋愛に嫉妬してるんで、頭を冷やそうと思って……」
素直な気持ちを伝えると、手首を掴まれていた腕が放された。そしてそのままぎゅっと抱きしめられる。
あの柔らかな感触に再び包まれて、やっぱりなぜかドキドキしてしまう。
「美月ちゃん! 最高よ! 合格よ! 花丸あげちゃう! 私の言葉は正しかったと証明されたわ!」
言われた言葉に首を傾げた。
……一体私は何に合格したんだろう?
抱きしめられながら、疑問でいっぱいな私に答えをくれたのは、他でもない元カノさんだった。
志保さんに引きずられるようにして、再び戻ってきた学の部屋。
そこに三人でソファに座るという、異様なスリーショットが実現している。今カノと元カノと彼氏の母親。……なかなかない組み合わせだ。
とりあえず、彼女の前に置いてあるカップの中身が綺麗になくなっていたことに、ちょっとうれしさを感じたりしながら、現実逃避をしてみたり。
「美月ちゃん、私は茜の友達で原田雪っていうの。もちろん学の元カノなんかじゃないし、結婚してラブラブな旦那がいるから心配しないでね」
にっこり笑顔で、さっきまでなかった指輪を左手の指定席に戻しながら、彼女……雪さんが教えてくれた事実に頷いた。
疑おうとすれば切りがないし、志保さんもうんうんと頷いているから、それは嘘ではないんだろう。
でも、どうして急にこんな状況が作り出されたのかが、全く分からない。