最後の恋―番外編―
「だから言ったでしょう? 美月ちゃんは学にはもったいないくらい、素敵ないい子だって!」
まるで自分のことのように自慢する志保さんに、心がほわんとあたたかくなる。
学に負けないくらい私もヘタレだし、未だにお姉ちゃんにコンプレックスを持っている私は、きっと志保さんが思うほど強くなんてない。けれど、こうやって志保さんに“いい子”だと思ってもらえているだけで、もっと強くなれるような気がする。
「うーん、でも学の方はまだヘタレなんじゃない?」
「……そうね、そこははっきりさせとかなくちゃいけないし、美月ちゃんだけ試すって言うのも不公平よね」
雪さんの言葉を否定するでもなく、むしろ嫌な予感しかしないことを言い出した志保さん。
「そうなると勿論……」
「そうね、美月ちゃんは学の彼女だもの。協力してくれるはずよ」
まるで私に聞かせるかのように相談しだす二人の視線が、ゆっくりとこちらを向いた。
学がよく見せるものとひどく似た、何かを思いついたような表情は、私の嫌な予感に拍車をかける。だってこの目、学が私をからかったり、何か企んでいたりする時の目と同じだもん!
だからこそ、できれば私を巻き込まないでほしいと切実に願ったけれど、今、目の前で行われようとしている悪巧みに、私が巻き込まれないわけがなかった。