最後の恋―番外編―
「ホント、反則」
そんな学のつぶやきが聞こえて、目を開けようとした。けれどその前に、唇に慣れ親しんだ感触。
突然の学からのキスにびっくりしてしまう。
ありえないくらいに心臓がドキドキと暴れはじめたけれど、学のくれるキスは優しくて好きだ。だから、拒否することもなく、されるがままに学の唇を受け入れた。
手に持っているカップを落とさないようにと、頭の片隅に思いながら、ちょっぴり苦いコーヒー味のキスを味わう。
コーヒーはミルクと砂糖をたっぷり入れないと飲めないのに、学とのコーヒー味のキスはとても好き。
学が与えてくれるものなら、なんでも好きになれる気がする。
そうやって幸せに浸りながらキスに酔いしれていると、ちゅっとリップ音を慣らして、学の唇が名残惜しそうに離れていった。
「誠人のとこ、行こうか。 これ以上してたら、このまま俺の家につれて行きたくなる」
言葉と同時に車のエンジンがかかって、エアコンから少し冷たい空気が吐き出された後、徐々に暖かい空気が車内に充満していく。
そうしてくれてもいいのに、なんて思わず思ってしまった自分が恥ずかしくて。
私はドキドキする胸を押さえながら、こくりと頷いて、キスの余韻に浸った。