最後の恋―番外編―
「美月ちゃん、そんなに深刻にならなくても。 ただのお遊びっていうか、おふざけなんだから……」
困ったように笑う雪さんの言いたいことは分かるけれど。それでも、そういうことを嘘でも言いたくないという気持ちが、どうしても消えてくれない。
「わ、私、ずっと相手の心変わりでフラれてきたから。嘘でもそういうこと言いたくない、です……」
ぽろりと自分の本音をこぼすと、茜さんが私の頭にポンと手を置いた。それに思わず顔をあげて茜さんを見上げる。
すると頭に乗っていた手が頬に滑り落ちてきて、そのまま頬を力いっぱい引っ張られた。
「っ!?」
「あぁら、よぉーく伸びるほっぺただことぉ。ちょっと、女子力ないくせに何でこんなにすべすべなの? これが若さの違い?」
痛みで息をつまらせる私もどこ吹く風、茜さんは楽しそうに言ったかと思うと、ムッと眉を寄せた。ほっぺを引っ張る手は少しも緩む気配がない。
「ひ、ひひゃいでひゅっ」
「ん? 何? もっとやってほしいの? でもこれ以上伸びないわよ、美月ちゃん」
涙目で“痛いです”と訴えている私の言葉を、わざと勘違いして完璧な笑みを浮かべる茜さん。そして一泊置いた後、一瞬で顔から表情を消した。
「美月ちゃん、あなたやっぱりヘタレなんじゃない?」