最後の恋―番外編―
「学、今電話大丈夫?」
今、学が電話できる状態なのかを確認。そしてまずは、今日学の部屋を掃除したこととか、志保さんとメールした内容とか、なんでもないことを話した。
そして、少しずつ私の緊張が和らいできたところで、とうとう本題を切り出した。
「あのね、今日ね、会ったんだ」
わざと“だれに”とは言わずに切り出す。
思った通り、気になった学は『ん?誰に?』と聞いてきた。
ドキドキしながらも、一息ついてから、答える。
「元彼」
私の答えに、しばらく学は何の反応もしなかった。ただひたすらに無言で、電話が切れてしまったのかと思ってしまう。
一度携帯から耳を話して、液晶を確認したけれど、通話中の表示がされたままだ。ちゃんと繋がっていることにほっとして、再び耳に携帯を当てる。
「……学?」
もしかして傷つけてしまったんじゃないかと思いながら、恐る恐る名前を呼ぶと、『あぁ、ごめん。聞いてる聞いてる。で? 会ってどうしたの?』と学の声が聞こえた。
しばらく無言だったわりには、特にいつもと変わりない声音だ。
気付くと三人とも、私の携帯に耳をてるようにして、すぐそばに集まっていた。その姿につい苦笑い。携帯からわずかに漏れる、学の声を聴いているらしい。