最後の恋―番外編―
スイスイと車を走らせながら、やっぱり話題は宮田さんの職業のことだった。
私が思いつく職業を言っても、学は「違うなぁ」と笑って否定するだけで、正解を教えてくれない。
いい加減、挙げる職業もなくなってきた頃、学がとうとう根負けしたように「教えてほしい?」と意味深に問いかけてきた。
「教えて!」
素早くその言葉に食いつくと、「じゃあ交換条件ね、一個俺のいうことを何でも聞いてもらおうかな」と、とっても割に合わないと思えるような条件を出された。
……何でもって、一番怖い。
でも、ここまで来たら知りたい。
目の前にぶら下げられた人参を、無視して立ち止まることなんて私にはできなかった。
なんだか少し嫌な予感がしつつも、「いいよ、教えて」と、その条件を呑むことにした。
だって、学だもん。
私が本当に嫌がることは絶対に言わない。それは確信してるから。
私の答えに満足げに頷いた学が口にした職業は、私が『絶対にこれはありえない』と、真っ先に除外したものだった。
「み、宮田さんが……シャチョーさん」
「そう、社長サン。っていっても副社長と秘書に有能なやつを就けて、なんだかんだわがまま言って、夏休みと冬休みをもぎ取ったって言ってたけどね」
「それは……なんていうか……」
言葉を濁した私のあとに続いて、「自己中心的な社長サンだよなぁ」と笑い交じりに、私の言いたいことをはっきり言ってくれた学。