最後の恋―番外編―
学をからかうためにかけた電話なのに、これじゃあ私がからかわれている上に、学への想いを公開告白しているじゃないか。
学の実家でも同じことしたのに、何回同じこと繰り返すんだろう。
……いいけど、別にいいけど。
本音だし、嘘じゃないし、誰に聞かれたっていいけれど。
でもやっぱり恥ずかしい。
身の置き所がない私に、学は電話の向こうから『俺も早く会って美月を抱きしめたい。……好きだよ』と甘いささやきをくれた。
電話が切れてから、さんざん三人にからかわれた。ついでに、旦那さんの惚気もたくさん聞かされた。
思い切って私も学の良さをこれでもかって程語ったのに、「でもヘタレだからねぇ」と言われて、撃沈する結果に終わってしまう。
その夜は、志保さんが作ってくれたご飯を四人で食べて、楽しかったりひやひやしたり、とにかくたくさん笑って幸せな夜を過ごすことができた。
そして、学が返ってきたのは宣言した水曜日じゃなくて、火曜日だった。
一日早く帰国すると知らされていなかった私は、会社の前で柱に寄り掛かるようにして待っていた学を見て、一瞬幻じゃないかと目を疑った。
恐る恐るかづいていくと、ふいに学が顔をあげた。
会社から直行で来てくれたのか、スーツ姿の学は私を見つけると、「ただいま」と笑みを浮かべて近づいてくる。そして、お帰りを言う間もなくいきなりぎゅっと、苦しいくらいに私を抱きしめた。
宣言通りの行動に笑ってしまった私の耳元に、「美月、会いたかった」と切なさを滲み褪せたささやきが聞こえたかと思うと、長い長いキスを額からプレゼントされた。
志保さん、茜さん、雪さん。
学はどんどんヘタレじゃなくなってきていると思います。
そんなことを思いながらも、久しぶりの学の匂いと温もりに包まれて、学のキスに応えた。
□END□