最後の恋―番外編―
式が終わって、たくさんの人がぞろぞろとあふれかえる大学構内。サークルの勧誘やらで囲まれてしまって、身動きが取れない状況だ。
さっきから代わる代わる、サークルの勧誘に囲まれて、断っても断ってもまたか囲まれるという、無限ループに陥っていた。
でも、ここで焦っておろおろしていたんじゃ、この状況から抜け出せない。
美月が「これお姉ちゃんに似合う!」と言ってくれたこのスーツの胸元を、ぎゅっと握りしめる。
大丈夫。私は美月のお姉ちゃんなんだから。
これくらい一人で切り抜けられるはずでしょう?
そう自分に言い聞かせて、ふんわりと余裕そうに見えるほほえみを浮かべた。
「失礼します。 先を急ぎたいので、道を開けてもらえますか?」
決して大きい声で言ったわけじゃない。それなのに、簡単には抜け出せない思えた人垣が、何故か綺麗に割れて、あっさりと道は開けた。
さっきまで勢いよく詰め寄ってきていた人たちが、なぜか熱に浮かされたような顔をしてぼうっとしている。
そんな様子を不思議に思いながらも、このチャンスを逃すわけないはいかない。
また囲まれてしまったんじゃ、困るもの。
気にせず足を進めて、人気のない場所を探すことにした。