最後の恋―番外編―
やっと見つけた、誰もいない場所で少し休んでから、さあーくるのチラシは一枚も貰わずにまっすぐに家に帰った。
看護師のお母さんが仕事でいないとき、家事が得意とは言えない美月の食事は、私が作ることになっている。お父さんも医者だから、あまり家にいないし、家にいたとしても美月と同じくらい、家事はてんでダメだ。
だから、大学の授業以外で時間を結構拘束されるサークルに入るなんて、全然頭になかった。
そもそも、私はあまり人付き合いが得意じゃない。
話しかけられれば答えるし、相談されれば真剣に聞くけれど。
でもそれは、“美月の理想のお姉ちゃん”の仮面をかぶっているからだ。それに相手が抱く私の理想像に、少しでも近づけるように無意識に背伸びをしてしまう。
これはもう、癖のようなものになってしまっていて、自分じゃなかなか直せない。だから、ありのままをさらけ出せるようになるまで、なかなか時間がかかってしまうのだ。
高校の同級生にはそういう友達が一人いたけれど、彼女は違う大学に進学した。
彼女とは何でも話せる仲だったからこそ、同じ大学に行こう、なんて仲良しごっこはしなかった。
行きたい道に進むための、最善の大学へと行くことを決めた時、違う大学を挙げてもお互いを応援できたくらい。それくらい仲が良かった。
知り合いが誰もいないこの大学で、私は、ひとりでもいいから、そんな風に心許せる友達を作りたいという目標を決めていた。
その決心を胸に、初めての講義を迎えた。