最後の恋―番外編―

高校の教室が、二つは余裕で入ってしまいそうな大きな教室。
大学の見学に来たときに、確かに見たはずのそこは、実際自分が座って講義を受けてみると、全然違って見える。

後ろの席に座ると、先生の顔ははっきり見えない。なにより今までの授業と違うところは、先生がマイクを持って授業をしていることだ。

それに、この教室にいる生徒が、ずっと同じクラスメイトというわけではない。

各々好きな講義を取っているし、必修科目はあるけれど、時間割は自分で決めている。だから、とっている講義によって教室の顔ぶれは全く変わってしまう。

そんな大学生活に慣れるのは大変だったけれど、なんとか授業内容は理解できていたし、そこでひとり、仲のいい友達ができた。

そいつはまるで、作り物の人形みたいに整った顔立ちだった。同じ講義を取っている女の子たちが、こぞって目をつけていると言っても過言でないくらいの、とっても目立つ男だった。
噂によると、ファンクラブがもうすでに結成されたらしい。

たまたま初めての授業で、たまたま隣に座っただけだったんだけど。
なぜだかすんなりと仲良くなることができた。

初めての友達が男っていうのも不思議な話だけど、なによりこの坂口学という男は、飾らないし、一線を引いたような話し方をしない。

私に話しかけてくる人たちは、男女問わずたいてい自分の理想を押し付けてくる。自分の容姿と雰囲気がそうさせてしまうと分かってはいるけれど、あまり嬉しい物じゃない。

だから、最初から私とその人の間には壁ができてしまうんだけれど、学は違った。


< 55 / 101 >

この作品をシェア

pagetop