最後の恋―番外編―

『な、これ、すっごい似てると思わない?』

ノートの隅に描かれた似顔絵のらくがき。それを指差して得意げに笑って話しかけてきた学。
そこには、ただイラストの完成を誰かに見てほしいという、純粋なものしかなかった。得意げにそういう姿が、少しだけ美月に似ていて、つい吹き出してしまったのだ。

イラストがとっても似ていた、というのもあるのかもしれない。

でも、学がそうやって話しかけてくれて、私も思わず素で笑ってしまったから、最初から自分らしくいられた。
学の人柄のおかげだったのかもしれないけれど。

でも不思議と、他の女の子たちのように、学にときめくことはなかった。

学は本当に、顔がいいだけで、性格はとっても子供みたいなところがあったから。だから、こんなやつを彼氏にしたら、その彼女は大変だろうと他人事のように思っていたくらいだ。



そんな学に紹介されたのが、宮田誠人という男だった。

彼に会ったのは、入学式から一週間を過ぎたころだった。


「コイツ、誠人」


突然の休講で、時間を持て余していた私は、学と校内の図書館で本を読んで時間をつぶしていた。そして、いつの間にか学の隣には、体格のいいクマみたいな男の人がいたのだ。
本に集中していた私は、彼が来たことに全く気付けなくて、いきなりあらわれたその人に驚いた。
そして、唐突にそう紹介されたのだ。

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