最後の恋―番外編―

学よりも身長が高くて、身体つきもしっかりしている。でも決して太っているわけじゃない。

髪は真っ黒で、セットしたらきっとかっこい部類に入るに違いないのに、ボサボサの髪で目元を隠してしまっている。
服装もよれよれのパーカーにくたびれたジーンズ、履き潰したスニーカーという、ラフすぎる恰好だった。

突然のことに驚きながらも、「三浦春陽です」と頭を下げる。
ちゃんと相手の目を見て笑顔で挨拶をしたのに、彼は自己紹介をするわけでもなく、頭を下げることもしなかった。

ただ、無表情のまま、その大きな身体で私を見下ろして、ただ一言。


「これがウワサの子? ホント欠点なくてつまんなそうだな」


そう言って、正面切って喧嘩を売ってきたのだ。

いや、喧嘩を売ったわけじゃなかったのかもしれない。けれど、威圧的な態度からそう思えて、だからこそ「学、私この人と友達になれそうもないから、失礼するわ」と、今までの私だったら、初対面の相手には絶対口にしなかったであろう言葉が出てしまった。

自分でも、どうしてそんな失礼なことを言ってしまったのか分からなかった。

こんなに不躾に、真っ向から否定されたことがなかったからかもしれない。
もしかしたら、理想視されることが当たり前のように思ってしまっていたのかもしれない。

でも、躊躇うことなくきっぱりと言ってしまった自分が、不思議でならなかった。

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