最後の恋―番外編―
そんな私の反応に呆気にとられていた学とは違って、さっきまでの無表情からは想像できないくらいに破顔した彼に腕を掴まれる。
その腕を引っ張られたと思ったときにはすでに、何故か彼の腕の中にいた。
抱きしめられている、と気付いて、頭が真っ白になってしまう。
……初めて父親以外の異性に抱きしめられた。
そのハグは、大きな身体に似つかわしくないくらい優しいものだった。初対面の異性に抱きしめられて、ドキドキして、戸惑って。でも、それだけじゃない。
まるで大きなブランケットに包まれているような安心感があった。
その感覚は、不思議なくらい身体に馴染んで、不思議なくらい心地よかった。
「やっぱり完璧なわけじゃないんだよなぁ、お前も人間だもんな。 うん、嫌なものは嫌って言える女の子って、おえr好きだから、友達になろう!」
私を抱きしめたまま、上から目線の“友達になろう発言”に呆れるよりも、つい吹き出してしまった。
なんだかこの人が学の友達なのが、すごくよくわかる。
威圧的な態度がウソのようなそのフレンドリーさと切り替えの早さに、怒るという気持ちが削がれてしまった。
この人も学と同じで、私のありのままを見てくれる人なのかもしれない。
そう思った私の直感は正しかった。