最後の恋―番外編―
後々聞いてみると、最初のあの発言の後で、私が『気にしてない』と言ったら、誠人君は私と友達になるつもりはなかったらしい。
“美人で完璧な高嶺の花”なんて、周りから言われているのは知っていた。
それは美月の理想通りのお姉ちゃんになりたいと努力していた結果であって、本来の私はそんなに完璧じゃない。弱音だってはくし、たまにはだらけたりしたいし、料理もインスタントで済ませちゃいたいときもある。
でも不思議と、学や誠人君の前だと、素の自分でいられた。飾ることのない素の私を二人は受け入れてくれたし、二人も私にありのままをさらけ出してくれた。
学は見た目のわりに案外ヘタレで、お姉さんの茜さんには散々こき使われているし。
誠人君は、あの見た目に反して可愛いものが大好きで、レースで小物を簡単に作れてしまうくらい手先が器用だった。
誠人君のそんな意外な一面を知っても、私は素直にそれに感動したし、逆にそのレースの編み方を教えて貰ったりしたくらいだ。
私は、大学に入る前の目標を、早くも達成することができたのだ。
そんな感じで三人で過ごす大学生活にもだいぶ慣れてきたある日。自分でも気付かないくらいの、微かな私の変化に最初に気付いたのは、学だった。