最後の恋―番外編―
「春陽、お前誠人のこと好きだろ」
誠人君とは違う講義で、久しぶりに学と二人で出た講義中のことだった。
後ろの席は先生から遠いから、小さい声で話す分には注意されない。
何気ない会話の途中で、突然何の前置きもなくそんなことを学が言ったのだ。
「え? うん、好きよ」
虚を突かれながらも素直に頷くと、学はこれ見よがしに大きなため息をついて、「違う」と首を振る。
「恋愛対象として好きだろって聞いてるんだよ」
言われて、じっくりとその意味を頭で考えて、理解した瞬間に、自分の顔に身体中の熱が集まった。
……え、私が恋愛対象として好き? 誠人君のことを?
ありえない、と否定している思いとは裏腹に、どうしてこんなにも心臓がどきどきしているんだろう、私。
「え、ちょ、……ちょっと待って」
自分でも分からない心臓の反応に、学に待ったをかけて必死で考える。
……うん、わかる。
このありえないくらいの胸の高鳴りは分かるけど、いつの間に誠人君に対してそんな反応をするようになっていたのよ、私の心臓は。
それに、どうしてこんな時に、初めてあった時の抱きしめられた感触を思い出しちゃうんだろう。
余計に心臓の鼓動が早くなってしまう。
そして、自分が誠人君に対する恋愛感情を否定しない自分に気づいた。