最後の恋―番外編―
それからは黙々とお姉ちゃんは編み続けていた。
その目は真剣で、ひと編みひと編みに想いを込めているのがすぐわかる。
お姉ちゃんの想いが叶いますように、と願いながら私はそんなお姉ちゃんを見続けた。
20分も時間がかからなかった思う。
「……できた」
思わず呟いてしまったような小さな声が聞こえて、一体どんなものが出来たのだろうと気になったけれど。出来上がったストラップは、見せてもらうことは出来なかった。
『誠人君に一番に見てもらいたいの』と頬を染めて言われてしまったら、見せてと言うことは憚れた。そんなお姉ちゃんの想いがいじらしくて、叶ってほしくて。
『絶対大丈夫だよ』と心からの言葉を贈ると、柄にもなくお姉ちゃんが、拳をぐっと握って『この勢いがなくならないうちに渡してくる!』自分を鼓舞するように言った。その勢いがなくならないように、と言わんばかりの勢いですぐに出かけていくその背中を、私はただ黙って見送った。
あれだけ想いを込めて作ったストラップが、悲しいものになりませんように。
宮田さんの携帯に、あのストラップがつきますように。
二人が無事に笑い合えますように。
そう願いながら、だらだらと過ごした午後。
夕飯の時間になってもお姉ちゃんはまだ帰って来ない。
今日は休日なのに、珍しく両親がそろって休みだったから、久しぶりに家族で食卓を囲む。「春陽もいたら家族そろってたのになぁ」と少し残念そうぽつりとこぼすお父さんの言葉に笑って、休日にはなかなか食べることのできない、お母さんが作ってくれたご飯を食べる。
その間も、告白が上手くいったから二人でラブラブしているのかな。それともダメで一人きりで傷心しているのかな。なんて、お姉ちゃんのことが気になって仕方がなかった。
うまくいって二人でいるなら連絡して邪魔したくはないけど、もしダメだったのなら一人でなんていて欲しくない。
頼りないかもしれないけれど、気の利いた言葉なんて浮かばないけれど、でもそばにはいてあげたい。