最後の恋―番外編―

悶々としながらご飯を食べ終えて、シャワーを浴びて部屋に戻っても、気になるのはお姉ちゃんのことだけだった。

ベッドの上で枕を抱えてゴロゴロしていると、携帯が震える。

お姉ちゃんかと思ったけど、サブ画面に表示されているのは休日出勤をしていた学からだった。


「もしもし?」

『あ、なんか少し声が低いね。 俺じゃないやつからの着信でも待ってた?』


“もしもし”という少しの言葉だけで、どうしてここまで感情が筒抜けなんだろうか。

やっぱり学は“美月マスター”だ、なんて思いながらも正直に「お姉ちゃんからの電話待ってたの」と伝えた。案の定理由を聞かれていきさつを簡単に教えると、学は『五分五分だからなぁ』と冷静に状況を分析してくれる。

きっと“五分五分”っていうのは、お姉ちゃんの告白の結果がどうなるのかってことなんだろう。


「もしかして、宮田さんがお姉ちゃんをふるの?」

『それってあんまりな言い方だけど、そうだなぁ……』


苦笑いしながらそう考えるように呟いた学は、『誠人はさ』と宮田さんのことを話してくれた。


『ああ見えて春陽と同じようになんでもすぐ出来るんだよ』

「……そうなのっ!?」

『そうなの。 ちゃんとした格好すれば結構いい顔してるし、でも社長って肩書があるうえに顔までいいと変な女が集まるから嫌だってわざとあんな格好してるんだけど。その分、春陽には恋愛感情っていうよりも仲間意識が強いんだよなぁ』


学の教えてくれた宮田さんの情報に、私は「そうなんだ」という言葉しか返せなかった。もしその仲間意識が強いというのが本当なら、お姉ちゃんには恋愛感情が全くないってことなのかな。
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