最後の恋―番外編―
この状況と今の自分らしくない声の二重の羞恥で言葉を発せない私を、ここぞとばかりにからかうかと思ったのに。
学は、ピタリと動きを止めて服の中に入っていた右手を拍子抜けするほど大人しく出した。私の腕をまとめていた左手は私腕をたどって背中を撫でて、そのすぐ後に学が私の隣に仰向けにバタンと勢いよく転がる。
「……美月、それ反則」
と訳の分からない言葉を呟いて、左手で自分の目元を隠しながら「くっそ、負けた気分だ」と大人学から子供学へといつの間にかシフトチェンジをしていた。
……なんだか分からないけれど、どうやら私は知らない間に学に勝っていたらしい。
さっきまで明らかに学優勢の状況だったのに、いつ形勢逆転したのだろう。
それすらわからないけれど、学に勝ったらしい私は、これ以上何かされたら困ると学から少し距離を取る。
……いや、私だって学に触れたいし触れてほしいけれど。
でも、その……。
下に両親が揃っている場所でっていうのが落ち着けない。
するならだれにも邪魔されない二人っきりのところで、とことんいちゃいちゃしたいもん。
思わず口をとがらせていると、「ちゅーするぞ」と学に言われて慌てて口を元に戻した。